第17章 気がかり
「うるせェのは御免なんだが」
『じゃあ、紺兄を中隊長から外して、浅草から出られなくする~?』
「本気で言ってんのか?」
『なわけないでしょ~』
俺は地面に腰を下ろしながら首に手を当て、聴はため息をつく。
「…なら、こういうのはどうだ?紺炉の灰病が治っても、それはこの町だけの秘密にする」
『秘密にするって』
「皇国の人間に会うときは、包帯巻いて化粧でもすりゃ、誤魔化せんだろ」
『…たしかに。近くで見られなければなんとかなるかも』
いろいろと考えを巡らせてやがるのか、聴と視線は合わないが、その表情は暗くない。
紺炉には面倒をかけちまうが、こればっかりは勘弁してもらうしかねェな。
「…第8の誰かが灰病になっちまったときは、そんとき考える」
『そうならないように力を貸すから問題ない、ってことね~。うん、紅の意見が1番平和に済みそう。…ごめんね、紅。迷惑かけるけど、よろしくね』
申し訳なさそうに苦笑いする聴にデコピンをお見舞いする。
「てめェが謝ることじゃねェだろ」
額を押さえ、まばたきを繰り返していた聴だが
『そう、だね。…じゃあ、ありがとう』
ゆっくりと、はにかむような笑顔になり、俺は内心で息を吐き出した。
くだらねェ理由で出ていかれたら、たまったもんじゃねェ…。
俺が動くことで、てめェが傍にいるってんなら、どんな労力も惜しむつもりはねェんだよ。