• テキストサイズ

旗幟鮮明【炎炎ノ消防隊】

第17章 気がかり


***聴視点***

鍛錬場に組手の音が響く。

攻め込んではいなされ、攻め返されれば威力を殺したり流したり利用したり。

炎を一切使わない、純粋な組手。

紅のほうが力はあるけど、上手くさばいて利用すれば私でも対等にやれる。

10年前は父から直々に教えられていたし、私が4つ年上なのもあって、負けることはなかったけど。

最近は勝ったり負けたりを繰り返すようになっていた。

紅が強くなっているのを実感できて嬉しい反面、少し悔しい。

あぁ、でも今日は…なんか、むしゃくしゃしてるねぇ…。

吹っ切れたんじゃなかったの、と空いている腹に蹴りを入れれば、後ろに吹っ飛んで倒れた。

そのまま息を整えるばかりで、立ち上がる気配がない。

今日はここまでかな、と私も息を整えながら、汗をぬぐった。

のどが渇きを訴えたので、水を取りに家に入る。

紅の分の水も持って鍛錬場に戻れば、紅は倒れたままだった。

顔を覗き込みながら、ん、と水を差し出せば、むくりと起き上がる。

水を受け取り一気飲みする紅を見ながら、自分も口をつけつつ、紅がむしゃくしゃしていた理由を考えた。

………が。駄目だ、分からん。こういうのは紺兄の役回りだ。

頭を悩ませている私を他所に、はぁーっと息を吐き出した紅は

「…あぁ。清々した」

と言った。

あ、そう。それは良かった。
/ 146ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp