第14章 信頼
***紺炉視点***
火事と焔ビトの対処が終わり、ようやく一息つく。
第8の連中、特に森羅には礼を言わねェとな。
『紺兄~』
後ろから聞こえてきた聴の声に振り返る。
おっと、医者以上の働きをしてくれたこいつにも礼を言わねェと。
「聴」
『発火能力、使わないでって言ったよねぇ~?』
いつも通りの笑顔だが、紫の炎の羽織をまとっているせいか、威圧感が半端じゃねェ。
「あ、いや、それは、だな」
『問答無用~!』
拳で左肩のあたりを軽く殴られ、上半身を炎が覆った。
「!」
驚いていると、身体を襲っていた痛みや倦怠感が和らぐ。
「聴、おめェ…」
『…数日しかいじってないけど、ほとんど把握してるからねぇ~。どうせ休めって言っても休まないんでしょ~?一時しのぎでしかないから、落ち着いたら覚悟しといてね』
「…おう、ありがとな」
心からの礼を述べれば、聴は半目になりながら、ジトリとした視線を寄越してきた。
「紺炉中隊長ー!」
森羅の声に視線を向ければ、聴もそっちを見る。
紅と聴は視線を交わすと、お互い不敵な笑みを浮かべた。
紅が口を開きかけたとき、聴がすっと視線を外し、詰所内に顔を向ける。
「姉さん!医者が、助けたけりゃ姉さんを連れて来いって!」
『あいよー』
炎の羽織を翻し、スタスタと歩いていく聴を見て、本当に危ないのだと分かっちまった。
俺と紅の顔がこわばったのを見て、第8も息を呑む。