第14章 信頼
***紅丸視点***
こいつ、この期に及んでまだ攻撃を…。
よりにもよって森羅を狙いやがった。
炎の矢をはじくことに集中させてやりてェが…。
相殺する暇はねェし、反らすことができたとしても、町に降り注ぐのはいただけねェ。
ギリ、と奥歯を噛みしめたところで、唐突にあいつの声が脳裏をよぎった。
『いざって時は力を貸すから』
ようやく帰ってきやがった、浅草の人間らしくねェ、のんびりしたやつ。
頼りねェように見えるだけで、その実力は俺が1番知ってる。
あいつの炎はこの騒ぎの中でも、静かに佇んで町の人間を守ってやがった。
あいつになら、任せられる。
妙な自信を胸に、森羅に向かっていた炎を弾いた。
「聴、下手うつなよ」
口元だけ笑いながら呟く。
『その言葉、そっくりそのままお返ししま~す』
あいつが目の前にいたら、こう返ってきたに違ェねェ。
町に降り注ごうとしていた炎は、紫の炎へと姿を変え、すぐに霧散した。