第12章 自分にできることを
『あー…、第8の大隊長さん』
呼びかけに応じてこちらを見た彼から、消防官ではないのに大丈夫なのか?という視線が刺さった。
『あまり効果はないと思いますが、行く先が火事である場合、通路をこんな感じで封鎖します』
脇の通路に紫の炎で格子を作り、さらにその上部に、火の手の方向を指す矢印と距離を表示した。
それを見た第8の面々は目を丸くしている。
…紅は炎の情報を伏せようとしてくれたけど、このくらいなら大丈夫でしょ。
『これは私の炎だと認識しておいてください』
ひとまず伝えるべきことは伝えたので、町の炎を見渡す。
バッと右腕を横にはらい、現在あがっている炎の外枠だけをとらえ、自分の炎で領域を限定した。
次いで両手を胸元まで持ってきて、ぱちんと合掌する。
人の動きに注意しつつ、通路を封鎖していった。
『それじゃ、救助と避難誘導はお願いしますね』
「君はなぜ…」
『はい?』
オウビさんが呆然としながら話しかけてきたので、とりあえず聞き返す。
「なぜ…、特殊消防隊に所属しないんだ?」
言われたことを反芻し、自分も首を傾げた。
『成り行き…ですかね?』
「は?…ははっ、成り行きか、そうか。いや、すまない、変なことを聞いたな」
ふむ、よくわからないけど、オウビさんは笑っているし、良しとしよう。
私はサクッと切り替えて、屋根伝いにその場を離れた。
「頼もしいだろ?うちの医者は」
「えぇ、まったくですね」
私が去った後、紺兄とオウビさんが和やかに笑っていたなんて、私は知る由もない。