第12章 自分にできることを
***聴視点***
そんなこんなで呑気に笑っていたんだけど、急に背筋を走った悪寒に、近くにあった民家の屋根に飛び乗った。
「聴!?」
下から紺兄が私を呼んでいるのが見えるが、それどころじゃない。
目の前ではいくつもの火柱が上がり、町が混乱に陥っていくのが分かった。
くそ、始まったか…!
紺兄に指示を仰ごうと下を見たけど
「若は…どこ行っちまったんだ?」
そう悔しそうに呟いたのが見えて、私はどう動こうかと思考を巡らせる。
第8が救助と避難誘導に動いてくれるのは助かるけど、果たしてこの混乱の中、みんなが言うことを聞いてくれるかどうか…。
と、ここで、何かが飛来してきた。
一連のやり取りを見るに、第8が知ってる敵らしい。
シンラくんとアーサーくんが飛び出していった。
『あっちには関わらないほうが良いよね~。…よし、紺兄』
「聴!おめェは」
『ごめんね、紺兄。私は好きに動くよ。火の手はある程度、私のほうでさばくから。ついでにヒカゲと紅も探すよ。紺兄はそいつ、よろしくね?』
少し笑って偽物を指させば、紺兄はどこかほっとした顔を見せる。
ん?今その顔はおかしくない?
「頼むぞ、聴」
信頼のこもった眼差しまで向けられてしまった。
止められるとばかり思っていたから、調子が狂う。