• テキストサイズ

旗幟鮮明【炎炎ノ消防隊】

第9章 情報提供 その1


***聴視点***

家まで急いで、薬を引っ掴み、屋根伝いで詰所へ戻りながら町を見下ろす。

ポツポツと見知らぬ気が町中にあり、眉間にしわが寄った。

紺兄に薬を塗ったら、事を起こしてくれる前に取り押さえないと…。

報告する暇があれば、若い衆も動かせるかな。

今後の予定を立てつつ、詰所前にスタッと着地。

しかし中を見た時点で頭を抱えた。

既に紅さんがいらっしゃらない…!

おいおいおいおい、と紺兄を寝かせている部屋に向かい、スパンと襖を開ければ、布団に起き上がってる紺兄がいた。

「聴…。早かったな…」

引きつった笑みを浮かべながらも、紅に続こうという意志が見え透いている紺兄。

相変わらずの様子に、兄弟そろって全くもう…、とため息がもれた。

『…うん、どうせ無茶するだろうと思って取ってきた薬だから、せめて塗らせて』

「!…おう、すまねェな」

未だに目を丸くしたままの第8を放置して、包帯を素早く解き、薬を塗る。

ええい、必要最低限の報告だけでもしとくか。

『…家までの往復で町を見たけど、知らない気配が複数、町中に散らばってる』

布を当てて包帯を巻き直す。

私の邪魔をしないようにか、紺兄も聞き方に徹していて、口を開く気配はない。

『見た限りだけど、どいつもこいつも浅草の人間と同じ顔してたよ』

紺兄から苛立ったオーラが漏れ、第8が少し騒がしくなった。

…よし、処置完了!

『偽物を捕まえるのに若い衆を借りたいんだけど、いい?』

包帯を巻き終える時に、紺兄の前で片膝をつく体勢になったから、見方によっては主人に許可を仰ぐ従者の図だ。

「任せる。まだ何かあんだろ?」

サラッと答えてしまう紺兄、素敵です。

そして伝えようか迷っている情報があることもバレてしまっている、怖いです。

『…化けてたやつがこんなの持ってた』

蟲入りのビンを取り出せば、視界の端で誰かがしゃべった。
/ 146ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp