第7章 やぁ第8の諸君
「第7の大隊長!!あんた最強の消防官なんだろ!?強すぎて仲間にするしかねェって町の火消しを皇国に認めさせたんだろ!?だったら今度は、俺があんたをぶっとばして認めさせる番だ!!」
「火事と喧嘩は江戸の華ってか?」
ま、正直なところ、この浅草では拳でぶつかるのが手っ取り早いしね。
とはいえ途中で止めたほうが良いよねぇ…、と中空を見つめていたら、詰所の外の気配が騒がしくなった。
シンラくんもハッとしている。
後ろの女の子…マキちゃんだったかな、が焔ビト!?と言ったのが見えた。
「若が…縁起でもねェこと言うから…」
『紅が…縁起でもないこと言うから…』
ものの見事に紺兄とハモった。
「クソッ…」
悪態をついて外に向かって歩き出し、暖簾をくぐりつつ振り返った紅。
「俺が帰ってくる前に消え失せろ」
その言葉を最後に紅は暖簾の向こうに消えた。
目の前の第8に出ていく気配はない。
どちらかというと火事を気にしている様子だ。
やっぱり他の特殊消防隊とは毛色が違うみたいだね。
『紺兄、私は留守番しとく。…第8の。火事が気になるんなら、浅草の鎮魂を見てきなよ』
「ぅえっ!?」
これまで静観していた私が話しかけたせいか、シンラくんは驚いたようだった。
紺兄は1つ息をつくと、何を言うでもなく暖簾をくぐる。
『うちのは特殊だからね。…それを見てから、これからのことを考えたほうが良いと思いますよ』
前半はシンラくんに、後半は第8の大隊長に向けて。
「…わかりました。ありがとうございます」
第8の大隊長は律儀に頭を下げると、他の連中を引き連れて、紺兄の後を追った。
ま、彼らなら浅草流の弔いを理解してくれることでしょう。