第6章 氷山の一角
***聴視点***
人払いを済ませてきた紺兄が腰を落ち着ける。
部屋の中には私と紅、紺兄の3人だけだ。
紅は不機嫌オーラ全開で、そんな紅を見て紺兄はやや困惑顔。
『とりあえず私が何してたかの報告ね』
そう前置きしたうえで、おじちゃん(偽)と会ってからここまでの経緯を説明した。
「なんでもっと早く言わねェ…」
『おじちゃんを保護してからでも遅くないかな~、と思っちゃったんだよねぇ~』
唸るように文句を言ってきた紅に苦笑を返す。
「若、ごもっともですが、今はこれからのことでしょう」
紺兄は口元に手を当て、いろいろな可能性を考えているように見えた。
紅は頭をガシガシとかき、めんどくさそうに中空に目を向ける。
そう、今回の騒動、意外と考えることが多いのだ。
1.おじちゃん(偽)がどこの誰で、なんのために成り代わっていたのか。
成り代われる、ということは、おじちゃんをそれなりに知っているということになるが、浅草でいなくなった人間はいない。
となると、おじちゃんを知っている外の人間か、浅草の誰かが外の人間を手引きし、おじちゃん(偽)を作り上げた、ということになる。
どっちにしても、何のために?という話だ。
前者の場合、燃えてしまったので、身元を判明させ、そこから考えるしかない。
後者の場合、手引きした人間を探し出し、絞め上げれば分かるはず。