第6章 氷山の一角
***聴視点***
紅と別れた後、私はとりあえず本物のおじちゃん探しを始めた。
さすがに浅草の中にはいるだろう、と散歩しながら目を凝らし続ける。
途中、声をかけてくれた人には、それとなくここ数日で浅草に帰って来た人がいないか聞いてみたけど、該当なし。
町の雰囲気からも、いい加減、ドッキリの線を消していいだろう。
あのおじちゃん(偽)には後でじっくり話を聞く必要がありそうだ。
『さすがに疲れた~…って、いたぁ!!!』
どちらかというと精神的な疲労を訴えたところで、ようやく見つけた。
先が行き止まりになっている細い路地。
その路地を少し入ったところに物置があった。
周りに人の気配はないから、隠すにはうってつけだっただろう。
物置を開けようとしたところで、鍵がかかっていることに気づく。
『用心深いことで…。さて、となると、トラップはーっと…』
視点を切り替えれば、扉から地面へと細い糸が繋がっていた。
その糸を目でたどれば、地中深くに爆弾っぽいものが複数見える。
『扉を開ければドカン、かな~…。そこまで難しい仕掛けじゃないけど面倒だな~…』
針金をいじりつつ、処理の仕方を考えるが、やはり爆弾を取り除いてしまうのが簡単そうだ。
シャベルとスコップを借りて来るか、と地面に向かって溜息を吐いたとき、誰かに呼ばれた気がして顔を上げる。
纏に乗った紅と、右側の壁を突き破ってきた焔ビトが見えたのが同時。
は?焔ビト?え、爆弾あるんですけど。火気厳禁なんですけど。一体どこの誰よ?…ん?あ、おじちゃん(偽)じゃん。え、この後、縛り上げて情報吐かせるつもりだったのに…。もしかして私に気づかれたと思って自分で焔ビトに?あ、でも核に蟲は見えないから自然発火?どっちにせよ、証拠隠滅しようとするその執念はすごいけど、人を殺そうとしてる時点で慈悲はないぞ?ま、浅草の人間じゃないから弔いは必要ないね。
この間わずか1秒。
自分の脳が叩き出した答えを元に、炎炎ノ炎ニ帰セ、ととりあえず思いながら、紅に向かって焔ビトを蹴り上げた。