第6章 氷山の一角
***聴視点***
さて昨日ジョーカーに、気をつけろ、と言われたので紅の散歩に同行中である。
ちなみにジョーカーとの会話は、他の人にはしていない。そもそもできやしない。
じきに第8が来るだろうし、その時に紅や紺兄が判断するだろう。
「おや、紅ちゃん、今日は別嬪さんも一緒かい!」
「あァ?どこに別嬪さんがいやがるってんだァ?」
『いやぁ、やっぱりおじちゃんは見る目がある、ねぇ~……?』
紅が立ち止まったのを見て、視線の先を追い、「今日は」くらいから口元を読んだ。
紅はいつものことなので放っておいて、八百屋のおじちゃんに笑顔を返そうとしたところで違和感に気づく。
とりあえず、と気の流れを見てみて、ぞっとした。
「は?あんた誰?」と言わなかった私を誰か褒めてほしい。
数日前に見たおじちゃんの流れと全く違う。
つまりそれは、目の前にいるおじちゃんは見た目だけで、中身は別人ということだ。
ドッキリ大作戦~!なんてことも考えたけど。
帰って来てから、浅草の人間の気の流れは全員分、記憶した。
誰も該当しない時点で外の人間の可能性が高い。
紅に伝えないと…、いや、でも、伝えたとして信じてもらえる…?
というか、本物のおじちゃん無事?
「…どうかしたか?」
私の様子がおかしいことに目ざとく気づいた紅がこっちを覗き込んでくる。
とりあえず、話すだけ話してみようか、と口を開きかけたところで
「ああ!!親父!!てめェ、今までどこ行ってやがった!?」
おじちゃんの息子さんが、おじちゃん(偽)につかみかかった。
「あァ!?んだよ、俺はここにいたっつーの!なァ!?紅ちゃん!」
「…あァ」
「え、本当ですかい、若?…んだよ、探しに行ったじゃねェか。骨折り損かよ…」
ぶつくさ言いながらも息子さんは頭をガシガシとかいている。
息子さんのほうは…良かった、本物だ。
…いや、本物なら本物で、本物をだませる偽物ということで、なおさらマズイのだけれども。