第5章 悪友
***聴視点***
昔のことを思い出していたたまれなくなったころ、実家に着いた。
これ幸いと切り替え、鍵を回して門を開ける。
目の前に続く道を踏みしめ、さらに家の鍵を開けた。
自分の家なのに、久しぶりとか懐かしいとかどうよ、と思いはしたが、正直、この家に帰る意味はあまりないので仕方ない。
さて、ジョーカーはお客さんになるのだろうか?
お茶くらい出すべき?
ひとまずお湯を沸かそうとしたところで、背後に気配が現れた。
ジョーカーのものだったため放っておいてお湯を沸かし始めれば、なぜか背後からお腹に腕が回される。
背中がピタリとくっついた。
うん?と思って顔を向ければ、微妙な顔をしたジョーカーが視界に入る。
「普通、どこの馬の骨とも分からんやつを家に上げるか?」
『ジョーカーは私を女として見てないから大丈夫かなぁ、って』
「アンタがいないときに俺が忍び込むとか考えねェのか?」
『ここに忍び込むメリットはー…、…ゼロだし』
「今の間は?」
『…医療に興味は?』
「ねェな」
『じゃぁ、ほら、大丈夫』
「…はぁ」
ジョーカーがため息とともに離れた。解せぬ。
「随分立派な鍛錬場があるんだな…」
家の中を物色しつつ、外を見たのだろう。
お茶を持って居間に行けば、そんなことを言われた。
『父が古武術の師範だったからねぇ…』
「は?…いや、女に武術は教えねェか」
『それが普通、なんだろうねぇ…』
「…その様子だとある程度は戦えそうだな」
『んー、紅と組手ができるくらいには?』
「紅って…、あの最強サンか?」
是と頷けば、ジョーカーが絶句した。おぉ、レアだ。
「…アンタは敵に回したくねェな」
『そっくりそのままお返ししまーす』
胡乱な目で相手を見つめながら、私はお茶をすすったのだった。