第5章 悪友
***聴視点***
『さーて、ここなら良いかなぁ。…私に何かご用ですか~?オニイさん?』
人目につかない路地に入り、私は振り返る。
私が帰って来た、というのと、紺兄の灰病が治りそうだ、というので、浅草はいつにも増して騒がしかった。
そんな騒がしさが落ち着いたころ、私を観察するような視線が増えた。
まぁ、懐かしい気配だったからしばらく放置してたんだけど。
向こうも私が気づいてることに気づいてるだろうから、放置しすぎも禁物、ということで行動に出た。
「…はっ、バレてたか」
『ふふ~、ご冗談~。本気で隠れてるつもりもなかったでしょ~?』
そこには黒い帽子を被り、左目をバンダナのような黒い布で隠した男がいた。
「分かっててここに来るとは、随分と肝の座ったお嬢さんだ」
『ありゃ、この浅草に足を踏み入れたオニイさんこそ、怖いもの知らずだと思うけどねぇ?』
「くくっ、お互い様ってか」
お互い笑みを絶やさずに、ポンポンと言葉を投げていく。
「ちょいと噂の真偽を確かめたくてね」
『噂~?』
「あぁ、灰病を治せる女がいる、と」
『…なるほど。それで~?お眼鏡には叶いました~?』
私の質問に男はニヤリと笑った。
「もう一押し欲しいところだな」
『それは残ー念』
まるでそれが合図だったかのように、男からトランプ状の炎が投げつけられた。
軽い足取りでそれらを避けると、男の顔が曇る。
『何かご不満でも~?』
「分かっててやってるだろ…」
男が若干ゲンナリしたので、思わずクスクスと笑った。
『ふふ~、言葉遊びは嫌いでした~?』
「嫌いではねェが、お嬢さんとする言葉遊びは、必要以上にする価値がない」
そう言って再び投げられた炎。
私はひとまずその軌道上から逸れたが
「少しはその目を労われ、ミヤ」
相手の口から一時期使っていた名前が飛び出したため、やむなく自分の炎へと変え、息を吐いた。
『お気遣いどーも。…久しぶりだねメラン、っと今はジョーカー、だっけ?』
出会ったときに勝手につけた名前と、今の彼がよく使っている名前をわざわざ口にする。
私の答えを聞いた男、ジョーカーは満足そうに笑ったのだった。