第56章 ”火事場の馬鹿力”の稽古
スゥゥゥゥとシンラくんの炎の色が変わる。
あぁ、いいね。期待通りの反応だ。
「その炎…いいじゃねェか」
紅も楽しそうな笑みを浮かべてる。
「静かに燃えてる…。でもすごく熱い…」
私の言葉にもめげず、場に留まったタマキちゃんが、呆然としながら口にした。
「掴みかけているな…」
紅はじっとシンラくんとアーサーくんを見極め続ける。
一歩間違えれば灰病だ。
稽古をする側だって生半可な気持ちでやってない。
さぁ、次の段階に進めるか、否か。
少しワクワクしながら眺めていると、意識がはっきりしたのか、シンラくんが
「新門大隊長、これが…?」
そういって自分の身体を見下ろした。
「あァ、限界の限界を超えた炎だ。よし2人ともいいぞ…。上出来だ!初めてできたな」
紅の労いの言葉と同時に、炎が消え、2人がバタンと倒れる。
私がパチパチと軽く拍手をしていると、紺兄が顔を覗かせた。
「初日にしちゃ修行は順調なようだな」
うんうん。やっぱり2人とも筋がいいね。
紅が直々にやってるだけはあるよ。
当の2人は困惑顔…、おや、シンラくんの様子がちょっとおかしい。
「?どうしたシンラ…」
紅もそれを感じたらしく、声をかけていた。
全員の視線が集まる中、シンラくんが発したのは
「アーグ大隊長が死んだ…?」
という衝撃の言葉だった。