第55章 “死ノ圧”
***紅丸視点***
散々可愛がられて、へばったシンラとアーサー。
こんなもんだろう。
「火であぶられ、はりつけで燻され、荷車で町中を引きずられ、裸でツンツン浸され…回され…。これに…なんの意味が…」
ぼやくシンラ。
自分の時を思い出すな。
「“火事場の馬鹿力”は限界の限界を超えなきゃならねェ」
「はい…」
「俺もそう言って紺炉にやられた」
「それで…?」
「……。たしかにこれになんの意味があるんだ…。確認したことねェな」
「エ゛…」
絶句したシンラとアーサーを連れて裏庭に回る。
「よしやるか」
「本当になんの意味もなかったんですか…」
「知らねェ。いちいち気にすることか?」
思わずそう言ったら
「ふざけんじゃねぇぞ!!」
「さっきまでのなんだったんだ!!完全にパワハラじゃねェかよ!!」
アーサーとシンラが文句を言いながら、ガッと殴り掛かってきた。
「死ねチクショウ!!」
「可愛がりのせいか怒りがこもってんな。いいな。どの攻撃にも“命の呼吸”を感じるぞ。殺意すらあっていい感じだ」
「当たり前ですよ!!怒りの恨みが入ってますよ!!」
へぇ、そうかい。
まだまだ余裕がありそうだ、と、シンラに打撃を重ねる。
「ちょ…大丈夫!?」
吹っ飛んだシンラにタマキが声をかけたが、俺はさらにそこに炎で爆発を追加した。
「やりすぎだ!!」
飛び掛かってこようとするアーサーを、身体から圧を放って封じる。
「怒りが怒りを生む。殺意を向ければ必ずその殺意は自分に降りかかる」
固まっちまったアーサーを蹴り
「お前ェらは“命の呼吸”を学んだ。てめェの命、仲間の命、敵の命…、命の大切さをなァ…」
手を休めることなく炎で追い打ちをかけた。
「だがまだまだ甘っちょれェ。火事場に臨むということは不動明王の業火にその身を投じるということだ。一瞬でも気を抜いたが最期…。明王の炎がてめェらの“命の呼吸”を止めに来るぞ」
起き上がろうとする2人。
おい、まだまだこんなもんじゃねェぞ。
「“命の呼吸”の次にお前たちが感じるモノは“死ノ圧”」
アーサーに炎を飛ばせば、後ろに吹き飛んだ。
「ボサッとするな!!明王に命とられるぞ」
やるからには徹底的にやる。
これでも、てめェらには期待してんだ。落胆させてくれるなよ。