第53章 追及してくんなよ??
「あなた、八月一日宮さん、と言ったかしら。うちで働く気はない?」
俺は思わずぎょっとする。
…いや、まぁ、聴の能力を考えれば妥当な申し出ではあるんだが。
『すみません、お気持ちだけいただいておきます』
「どんな能力か知らないけれど、うちに来たほうが、間違いなく、人の役に立てるのに?」
『私は根っからの原国主義者なので』
「…そう」
少し顔をしかめて、第6のは出て行った。
それを追って第5のも出ていく。
『ふぅ…。追及されなかったね。ボロ儲け~』
「ったく…。さすがに肝が冷えた」
『バレるタイミングとしては、かえって良かったかもね~。白装束に感謝しなきゃ~』
「複雑なところだな。蒸し返されねェといいが…」
『そうねぇ~…』
そう言って笑う聴の瞳には「まぁ、やろうと思えばどうとでも」という色が浮かんでいる気がした。
なんだろうな、こいつの場合、血の気が多い、で済ましちゃいけねェ気がすんだよな…。
目的のためには、なんの躊躇もなく屍を築きそうというか。
『そんな私はお嫌い~?』
「…声に出てたか?」
『いんや~。でもなんか、血も涙もねェやつにされた気がした~』
「んなこと思っちゃいねェよ。ただ…、自分をないがしろにするんじゃねェぞ」
『え、紺兄には言われたくない』
鋭利すぎる言葉の刃に、俺は二の句を失ったのだった。