第53章 追及してくんなよ??
***紺炉視点***
部屋に入り、上を脱いで、第6のに背中を向ける。
聴に視線を向けると、全員の口元が見える位置に陣取り、感情の見えない笑みを浮かべてやがった。
どうなることやら、と思っていると、包帯の上から俺に触れた第6のが息をのむ。
「相模屋中隊長、あなた、まさか…」
「どうかしたかい?」
「とぼけないで。包帯を解きなさい」
やっぱりこうなったか、と包帯を解いてみせりゃ、第5のも愕然としているのが見えた。
「そんな…。あなた、一体何をしたの?」
第6のが少し声を大きくしながら聴に問う。
『何って、私がやったのは灰病の治療だけですよ』
「それが異常だと言っている!」
第5のも同じ意見らしい。
やっぱり、灰病は不治の病って認識はまだ変わってねぇんだな。
『異常って、これまで治療法が見つかっていなかっただけじゃないですか』
そんな2人をものともせず、聴は平然と言ってのけた。
『たまたま私が灰病をどうにかできる能力者だった。それだけです。さ、時間は有限なんですから、本題に移りましょう?』
だいぶ無理やりに、聴が話題の転換を試みる。
「……それもそうね。触診を続けます」
あまり納得していない口調だったが、第6のが乗ってくれて助かった。
このまま、なんの追及もないことを願うばかりだな。