第52章 げ、第6の大隊長は困るなァー!
「第6特殊消防隊大隊長 火代子 黄です」
「カヨコさん、あいつです」
玄関で紺兄と対峙している、第5と第6の大隊長を見て、それどころではなくなった。
あちゃー…。灰病が完治してるってバレちゃう。
まいったね、思ったよりも早かったな。
さて、どうするか。
“神の気まぐれ(ウィムオブゴッド)”の事例を増やす…?
いや、アドラリンクもしているとなると、紺兄がラットにされかねない。
それは阻止しないと。となれば。
『紺兄、お客さん?』
「聴か。あぁ、なんでも“あどらりんく”やら“どっぺるげんがー”やら、俺の身体に聞きにきたらしい」
『へぇ…。なら私も同席させてもらおうかな』
「失礼ですが、あなたは?」
第6の大隊長が怪訝な顔で話しかけてきたので、私はにっこり笑って
『申し遅れました。私、灰病の治療を担当している、八月一日宮と申します』
と名乗りを上げた。
紺兄はいつも通りの表情を保ちつつ、私のほうを凝視している。
なんせ紺兄には、灰病が治っているとバレたら“神の気まぐれ(ウィムオブゴッド)”ってことにして誤魔化すように、と伝えてあったから。
もっとも、これまでにこの嘘が使われることはなかったが。
おかげさまで方針転換ができる。
「なるほど、先日から気になってはいたが、ここの医者のようなものだったか。カヨコさん、どうします?」
「私は構わないわ」
「分かりました。なら、あくまで見学だけだ。邪魔はするなよ」
『もちろんです。ありがとうございます。では、こちらへどうぞ』
そう言って私が身体の向きを変えると、紺兄が当然の流れのように横に並んだ。
「いいのか?」
と口パクで聞いてきたので、後ろの2人にバレない程度に頷いて返した。
ま、なるようになるっしょ。