第50章 ”アドラリンク”に”ドッペルゲンガー”ねぇ…
***聴視点***
そうして、河原のあばら家で、お茶を飲みながら、訪ねてきた2人の話を聞くことしばし。
「その“あどらりんく”ってのを俺としたってか?」
「はい…」
紺兄の問いかけに、シンラくんは神妙に答えた。
ふーん…、“アドラリンク”をするのは、“アドラバースト”を持つ者か、“アドラ”と接触をしたことがある者のみ、か。
にしても、これだけの情報…。よく死人なしで手に入れられたね…?
「地獄のような異界を見たりとか、何か心当たりはないですか?」
「……」
私は、シンラくんの質問に1度口を閉ざした紺兄を眺めた。
あれは心当たりがある顔ですね。
「あァ、あるよ。2年前の話だ」
ほら当たった。
「前に話したろ?2年前に起きた浅草の大火災」
「2年前って浅草で“鬼”が出たっていう…」
「あァ、そうだ。俺が灰病になった時の話だ」
知らない情報の気配に、しっかりと3人に視線を向ける。
紺兄が言うには、対峙した“焔ビト”が自分と鏡写しだと感じたらしい。
第5の大隊長曰く、それは“ドッペルゲンガー”なのだとか。
ドッペルゲンガーとは、自分とまったく同じ姿形をした者が、この世に存在するという都市伝説のこと。
ドッペルゲンガーに会うと死ぬか殺されるらしい。
「こわ!!」
「たしかに殺しにきた感じだったが…」
うん、シンラくんの反応が一般的だよね。
紺兄は肝が据わりすぎ。
「それを逆にぶっ殺し返すとは随分といかつい男だな」
「さすが紺炉中隊長」
「滅相もねエ」
上から、第5の大隊長、シンラくん、紺兄。
え、私?部外者面して、お茶飲んでます。
だってその頃といえば紺兄がバッチリ現役の時だし。
紺兄vs紺兄なんて規格外なバトルがあったのなら、浅草が半壊したのも納得というか。
あわよくば見てみたかったなぁ…。
そんですぐに治療すれば灰病ももっと軽くてすんだはずだし。
…いや、他の人に手一杯で治しきれずに悔やむことになったかな?
それはそれでヤだな。
ま、タラレバを言っても仕方ないね。