第46章 避けては通れない話
口を開きかけた聴は、グッと再び口を閉ざし、ふぅーっと息を吐き出すと
『あ~…、何から話したもんかな~…』
と苦笑した。
こいつは今、何か言おうとしたことを寸前で飲み込んだ。
順番なんざどうでもいい、そう言おうとしたら、紅がおもむろに動き聴の胸倉を掴みやがった。
「何がそんなに不安だ?あァ?」
聴は驚いているのか、紅を見て目を丸くしている。
「先に言っとくが、てめェがどんな話をしようと、この浅草から追い出す気なんざ微塵もねェ。見る目だって変えねェ。なんなら、その辛気臭ェ顔の原因を殴り飛ばしに行ってやる。これでもまだ不安か?俺らはそんなに信用ならねェか?あァ?」
おい、紅、否定はしねェが、原因を殴り飛ばしに行くかどうかは一旦保留にしとけ。
というか、これで聴が手を出したら、話し合いどころじゃなくなるじゃねェか、と聴の顔を確認する。
そこには、何か憑き物が落ちたような顔でゆるく笑っている聴がいた。
『…ごめん、紅。必要以上にビビってたみたい。ありがとう。ちゃんと話すから』
聴が胸倉を掴んでいる紅の手に、自分の手を重ねる。
紅は聴をしばらくジッと見つめた後、スルリと手を放し、元の位置に座った。
『とりあえず思いつくまま話すから、質問あったら口を挟んでよ』
覚悟を決めた顔をしている聴に、俺も姿勢を正した。