第44章 両手に花…?
『ジョーカー、何度も言うが、俺から報告することはない』
「俺の勘が言ってんだよ。アンタは何か掴んだってな」
『迷惑な勘だな、おい…。その勘を尊重して話をするとしても、頼むから日を改めろ』
「聞き出すなら、今のほうが俺に分がある。逃がすわけねェだろ」
私に考える時間を与えたら、黙秘される可能性がある、とか思ってんな、こいつ。
これが日頃の行い、ってやつですかね…。
『はぁ…。所詮は連想ゲームの結果だ。確証なんて欠片もない。そんな曖昧なもんが欲しいなら、いくらでもくれてやる。だが、俺の最優先は浅草で、こいつらだ。だから今日のところは引いてくれ』
親指で紅を指しながら、ジョーカーの目を毅然と見つめる。
隠すつもりはない。危惧した未来が来るのなら、協力関係にあるべきだ。
「…仕方ねェ、灰島のほうが終わるまで、お預けを食らってやるよ」
するっと解けたジョーカーの腕に、心の底でため息をついた。
ジョーカーは後ろ手に手を振ると、いつも通り、闇に溶ける。
「おい、なに勝手に話を進めてやがる」
紅さんや、ちょっと一息つかせてくれませんかね?
相も変わらず、腰に回されたままの手が、存在を主張してきた。
『こうするしかなかっただろ…。優先順位を守れた、俺的には及第点だ。…とりあえず、帰ろう。話をするには場所が悪い。何より、少し疲れた。精神的に』
「…チッ」
…バーンズさん、やっぱり同時に手綱を握るのは無理です。