第3章 成果
父さんが灰病、母さんが病で亡くなったこと。
1番上の兄さんが焔ビトになってしまい、その時の火事に2番目の兄さんも巻き込まれて、帰らぬ人となったこと。
浅草に鬼が現れて、その鬼を倒すために発火限界を超えた紺兄が灰病を患ったこと。
自警団は第7特殊消防隊として活動しており、紅が大隊長であること。
『ほぁ~…。情報量…』
「こうして振り返ってみると、お前ェのいない間に随分と変わっちまったなァ」
紺兄が噛みしめるようにポツリと呟く。
紅は紺兄のことを引け目に感じているのか、居心地が悪そうだ。
『うん、教えてくれてありがとねぇ。…さて、今日の治療はこれにて終了~』
砂時計の砂はまだ残っているが、紺兄の身体の具合を観察して、私は切り上げることにした。
「もう終いかァ?」
紅が立ち上がりこちらに歩いてきたので、紺兄の背後を譲る。
代わりに私は紺兄の前を陣取った。
「どうですかい?若。俺としてはだいぶ身体が楽になった気がしてるんですが」
「…」
「若?」
「…っ、あァ、灰化してる部分が小さくなってやがる」
『ん、大丈夫そうだねぇ。今日で2割くらいは治せたかなぁ。5日くらいで治りそうだねぇ』
手袋を外しながら、砂時計を回収し、それらをまとめて右手で持った。
「ありがとな、聴。正直、今でも信じられねェ」
『お礼を言うのはまだ早いよ、紺兄~。完治はしてないんだからさぁ』
紺兄の顔には隠し切れない喜びが滲んでいて、私も思わず頬が緩む。