第3章 成果
「紺炉、痛みはねェか?」
「いいえ、まったく」
紅が痛みの有無を確認する言葉を紡いだのを見て、紺兄に目を向けると答えは否だ。
『調整するって言ったじゃ~ん。よし、診察終わり~。治療に入りまーす』
勝手に宣言したものの、ここから先は私だけの作業だ。
火を起こしているのは紅だし、心配なく進められる。
父を助けることはできなかったが、こうして紺兄を助けられるのだ。
費やした時間は決して無駄じゃなかったと思える。
「…聴、話しかけても大丈夫か?」
こちらの様子を伺いながら、紺兄が尋ねてきた。
『うん、平気だよ~。なぁに?』
「…家には寄ったのか?」
『まだだねぇ。顔を合わせられる家族はもういないし、詰所のみんなに会いたいなぁ、って思ったから先にこっちに来たけどダメだった~?』
「「!!」」
遠回しに、私のいない10年間で家族が全員死んでしまったことを知っていると伝えると、2人はどうやら驚いたようだ。
「…どこまで知ってる?」
『ん~、死んだ時期くらいかなぁ…。それ以外は何も~。だから教えてくれると嬉しいなぁ、なんて』
「そうか…」
紅からどこか泣きそうな気配が伝わってくる。
紺兄も前を向いてしまったため、見えはしないが、悲痛な面持ちをしているような気がした。
それでも2人は私が知っておいた方が良いことを、かいつまんで教えてくれた。