第39章 紅&ジョーカーside その1
***紅丸視点***
「ん?ミヤはどうした?」
「入口で別れた」
「ほぉー?ま、心配はいらねェか」
皇国に指名手配されているその男は、そんな返しをして、無機質な道を進んでいく。
しばらく2人分の足音だけが響いた。
…いい加減、問い詰めるか。
聴との関係も気になる。
「そろそろ答えろ。お前は一体何モンなんだ?ここまではノリで付いてきてやったが、答え次第で今度はてめェも潰さなきゃならねェ」
「昔話は苦手でな。まぁ、いいじゃねェか」
またか。だが、今度ばかりは、はぐらかさせねェ。
そいつの襟をつかんで壁に押し付ける。
「おい。脅しじゃねェぞ」
語気を強めれば、そいつの顔から軽薄な笑みが消え、手が振り払われた。
「昔いたんだよ。俺もこの教会にな。おかしなことじゃねェだろ」
んだと?つまり…。
「待て」
「まーた質問か?浅草の破壊王も、意外と他人に興味あるんだな?」
「じゃあ、てめェ…、昔はおかっぱだったのか!?」
「してねェよ!俺はもっと暗部にいたからな!」
わりと本気で想像したが、かなり食い気味に否定された。
って、いや、違ェ…。話が逸れたじゃねェか。
「暗部?」
「どうせ、じきに出て来るさ。邪魔が入る前に目的の聖典を探すぞ」
なるほどな。聴がこっちを勧めてきたのは、そいつらが理由か。
「…そんなてめェが、なんで聴を知ってやがる?」
「また質問か…。昔、仕事をしくじった時に世話になったんだよ。まさか、その素性が、浅草の破壊王のお気に入りだとは、つい最近まで知らなかったがな」
「あァ?つくなら、もっとマシな嘘をつけ。俺の目には、気心の知れた仲に見えたが?」
「文句なら、お宅のお姫サマに言ってくれや」
楽しそうに笑ったそいつは、その言葉を最後に、歩みを速める。
聴のやつ…、この10年、ホントにどこで何してやがった?
何かと騒がしくて聞けず仕舞いだったが、ここまでくると見過ごせねェ。
帰ったら、洗いざらい吐かせる。
紺炉にも手伝ってもらわねェとな。