第37章 慌てる?私が?ナイナイ
『残念ながら、答える馬鹿も必要ねェな』
「なに?」
煽るようにして言うと、巨漢がこちらを睨んできた。
そんなものは気にも留めず、転がってる紅を親指で指し、見るように促す。
その身体からは湯気が出ていた。
「お?」
ジョーカーと巨漢が見つめる中、紅が起き上がる。
巨漢は分かりやすく狼狽えていた。
「てんめェ、何か盛りやがったな?」
「馬鹿な!大型動物すら即死させる猛毒だ、ブゥッ!」
はい、瞬殺。わざわざの説明、ご苦労様でした。南無。
倒れた巨漢から、細長い棒状のものが零れ落ちる。
それを拾ったジョーカーが
「吹き矢…。こいつで毒を盛ったのか。お前なんで平気だったんだ?」
と紅に聞いた。が、当の紅は前髪をかきあげながら
「知らねェ。効かねェもんは効かねェんだ」
と言い放った。
「ミヤ、アンタが平然としてた理由はこれか」
『あぁ。あいつに毒の類は一切効かねェ。さっき盛られたやつよりタチの悪いやつも盛ったことがあるが、今と同じ反応だったからな』
「そりゃ最強サンだ」
納得したように呟いたジョーカーは、手にしていた吹き矢をポイと放り投げる。
「るっせェ。さっさと行くぞ」
「へいへーい」
歩き出す紅。それに続くジョーカー。
これは動物っていうより歩く天災では?と思いながら、私も後に続いたのだった。