第35章 お約束
***ジョーカー視点***
「お前さん、皇国に手配されてるやつだろ。何のために危険を冒して皇王庁に乗り込むんだ?」
最強サンからの質問に、ミヤをチラリと見る。
何もしゃべってない、と首を振る様子に内心で笑った。
「…俺の正義のためさ」
とうとうと語りながら、両腕を掲げ、炎で“Stray Dog”と綴る。
『野良犬…。相変わらずの思想家っぷりだな』
ミヤは呆れたような声を出し、最強サンは無言のまま数歩進んで、皇王庁に視線を移した。
「あそこには何がある?」
「聖陽教が隠してきた真の聖典さ」
「聞いたことねェな。そんなの、なんで知ってんだ?」
「教会にはちょーっとばかり詳しくてねェ」
俺の答えを聞いて、最強サンは確認するようにミヤのほうを見る。
『聖典の話は俺も初耳だ。ジョーカーが元教会関係者ってのは薄々気づいてたが』
「ミヤは一切興味を示さなかったからなァ」
『聖陽教は鬼門だからな。用もないのに近づくほど暇じゃねェ』
淡々と答えながら、ミヤは手袋をはめた。
腰に手を当て、行くんだろ?という表情でこっちを見る。
あぁ、これ以上の問答は時間の無駄だからな。
「さぁ、下に降りてお礼参りと行こうぜぇ」
「降りるのかよ!何でここに登ったんだ!?」
「高いところから見下ろすのはヒーローのお約束ってやつだ」
『諦めろ、紅。いちいちツッコんでたらキリがねェ』
おいおい、ミヤ。もうちょいノってこいよー。