• テキストサイズ

旗幟鮮明【炎炎ノ消防隊】

第34章 知らない顔


***紅丸視点***

聴を自分の後ろに据え、纏で空を掛ける。

しばらく水平飛行を続けていると、聴が裾を引っ張ってきたため腰を落とした。

『紅、薬剤への耐性は昔のまま~?』

「…さァな。てめェ以外に試してくるやつなんざいやがらねェから確かめようがねェ」

『それもそうか~…』

顎に手を当てながら、こちらを上から下まで見分する聴。

『問題なさそうだね~』

「…なんかすんのか?」

『今のところ、私は考えてないよ~。恐らくジョーカーは何かしら仕込んでるかな~。あとは敵さんしだい~』

話を聞きつつも、見た目は“線の細い男”な聴を見て、こいつは一体どれだけの顔をもってやがんだ?と思った。

口を開きさえしなけりゃ、違和感が仕事しやがらねェから、気の置けない連れが1人増えたような気がしやがる。

「…心配するだけ時間の無駄だ」

『ま、紅でダメだったら全人類ダメだろうしね~』

ニヤリと笑う聴に、一昔前にやった実験を思い出した。

『仕掛けるだけ薬の無駄だね。ホントにすごい』

思えば、聴から手放しで褒められたのは、あれが初めてだった。

俺からしてみれば何てことねェのに、こいつは目をキラキラさせて。

『腕っぷしが強くなったら、怖いものなしだね~』

ヘラリと笑いながらも、聴の瞳には確信のようなものがあって。

俺もそうなりてェと思ったし、その瞳に背中を押された気がした。

『私はそのとき、どうしようかな~…』

そう言って、遠くを眺める聴に漠然とした不安を抱いたのも覚えてる。

その不安が現実になって、絶望したのも。

…あんな思いも、空白の時間も、金輪際、願い下げだ。

たとえ、この10年で、てめェが人には言えねェようなことをしていたとしても。

もう2度と離しやしねェからな。
/ 146ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp