第33章 れっつ男装
***聴視点***
そんなこんなで、あっという間に襲撃当日。
天候は…浅草は、晴れ。
私は少し早めに準備を開始していた。
身体のラインを男性寄りに補整し、皇国の服を着る。
紅やジョーカーならまだしも、私は身バレする訳にはいかないからね…。
もし身バレした場合、平穏な日常とはオサラバだろう。そんなのは御免だ。
カラーコンタクトを入れ、念入りにメイクをしてカツラを装着。
小型のランプに火を灯し、腰のベルトに括り付けて、予備の火種を確保。
首元まで隠れるフード付きのマントコートを羽織り、手袋…はまだいいか。
念のために用意した、特殊ゴーグルをかけて動作を確認。
…ふむ良好ですな。よきかなよきかな。
最後に、薬品を少しばかり懐に忍ばせて、実家を後にした。
―――
『べーにーさん。こんな夜更けにどこ行くの?』
屋根に上がった紅の後ろから声をかける。
警戒したように、少し距離を取りながら振り返った紅は、私を見て目を丸くした。
「…聴、か?…てめェ、なんだその格好」
『おぉ、正解~。お礼参りに行くって聞いたからさ~。せっかくの機会だし、見学させてもらおうと思って。変装してきました~』
軽い調子で答えつつ、右手の人差し指をピンと立て、その指先に紫の炎を灯す。
全てを踏まえて、私である、と確信したらしい紅は警戒を解いた。
が、鋭い視線は変わらない。
「てめェ、あの男と顔見知りか?なんでその話を知ってる?」
『ジョーカーは簡単に言うと昔の患者~。私も誘われたんだよ~、お礼参り』
端的すぎる私の答えに紅は不服そうだ。
しかし、追加情報を寄越さない私に諦めがついたのか、いつも通りの雰囲気に戻る。
うん、ひとまず同行の許可が下りて良かったよかった。
『というわけで、私も一緒に連れていってね~』