• テキストサイズ

イケメン源氏伝 《短編集》

第2章 「笑顔って怖いよね」/源頼朝


「頼朝様っ!よくぞお戻りで!」
「ああ、出迎えご苦労。
村長、安心するといいあやかしの脅威はこの二人が追い払ってくれたからね」
「おおっ、なんと有難い!何と御礼申し上げれば!!」

そう言ってご老人の村長は私たちに深々と頭を下げて、
その身全てて感謝を伝えてくれる。

周りに心配そうに集まっていた村人の人たちも安心したように顔を綻ばせていて、
怖かったけれど挑んで良かったと心から思えた。

「して……由乃様になにかおありでしたか?」

そのまま少し歩いていくと、
村長と共に出迎えてくれていたお付の兵の方たちが頼朝様に抱えられた私を見て、
心配そうに頼朝様に問いただしている。

「ああ、山を降りる途中で足を挫いてしまってね。
出来れば冷えた水と包帯を貰えるかな?」
「分かりました!すぐにお持ち致します」

そう言って兵の一人が宿屋にある薬箱の中にある包帯と、
冷えた水が入った水桶を持って、
宿の頼朝様宛てがわれた部屋に運んできてくれた。

「あ、あの頼朝様……自分でやります」
「良い。お前は大人しくしてろ」

どこか怒っているような呆れているようなそんな雰囲気を纏っている頼朝様に、
これ以上何も言えなくて、
ただされるがままに応急処置を受ける。

「……由乃」
「はい」

突然ぎゅっと抱き寄せられて、
私は胸の鼓動が高鳴るのを感じながら、
私の頭に顎を乗せている頼朝様の言葉を待つ。

「怖かったか?」
「怖くなかったといえば嘘になりますけど……。
でもこの村の人達の為になったのなら、
私はとても嬉しいです」

連れてきたことを少し後悔しているのか、
どう思っているのかは頼朝様にしか分からないことだけど、
私は素直に思ったままを口にした。

「……そうか」

私の頭に乗せていた顎を頭から離すと、
ちゅと額に口づけを落とされる。
それはまるで労わるかのように優しくて暖かい口づけだった───。


【the end】
/ 25ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp