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イケメン源氏伝 《短編集》

第5章 「初恋」/源義経


「義経様は、初恋のお方はいたんですか?」
「初恋の相手?……俺はあなたが初恋の相手だ」

優しい瞳で私を見つめていた義経様に、
私からも聞きたくなって質問をしてみた。
一瞬だけポカンとした後フッと笑みを浮かべたと思った瞬間に、
私の視界は義経様の端正なお顔と見慣れた部屋の天井を映していた。
天井が視界の端に見えたことで、
私は今義経様に押し倒されたのだと気付く。

私を見下ろす義経様の瞳の奥に、
熱い灯火が見えたような気がして、
それを見た瞬間に私は身体の芯から、
義経様の熱にあてられてそれが移ったかのような感覚に陥る。


「ッ義経様?」
「俺の初恋の人はあなたなのに、
あなたは別の男だったことが少し……いやとても不快に感じる。
自分からあなたに質問しておいて、
おこがましいことだと分かっているけれど」

少し悩ましげに眉を寄せる義経様のお顔を見て、
その色香に煽られる。
その表情を見た瞬間に私の頬が熱くなるのを他人事のように感じた。

「私の恋愛の意味合いでの初恋のお方は義経様ですよ?」
「それでもだ。
一時はあなたの心を他の男が占めていたことが許せない気持ちになる」
「義経様……」

徐々に近付いてくる義経様のお顔を呆然としながら見つめていると、
そっと唇に温かいものが触れる。
それが義経様の唇であると気付くのに少しだけ時間を要した。

やきもちを焼いてくれているのだろうか?
そんな義経様のお姿を見るのは初めてだから、
見たことのない義経様のお姿を見れたことに嬉しさを感じるけれど、
義経様は何だか腑に落ちない表情を浮かべている。
どうにかして初めて愛しいと思った相手が義経様であるとお伝えしたいのだけれど、
私が何か言葉を発するために口を開こうとすると、
紡ごうとする言葉を飲み込むように義経様に口を塞がれてしまう。

どうしても義経様に愛する人はあなたが初めてなのだと知ってもらいたくて、
気持ちだけでも伝わるようにその背中に両腕を回した────。


【the end】
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