• テキストサイズ

イケメン源氏伝 《短編集》

第5章 「初恋」/源義経


「由乃はかつて初恋を抱いた異性はいたのか?」
「え?」

すっかり日も暮れ肌寒くなった秋の平泉。
私は仕事終わりに、
いつものように義経様のお部屋に訪れていて、
他愛ない話をしている中で、
突然義経様から聞かれた問いに驚きで一瞬だけ思考が停止してしまった。

「初恋の相手ですか?」
「あぁ。
つい先日千代が初恋の相手と婚姻を結ぶことになったことは知っているだろう?」
「はい」

千代(ちよ)さんは義経様に命じられて私付きの侍女になったお方のことで、
私にとっては姉のようなお人なのだけれど、
つい先日兵のお一人と婚姻を結ぶことになったと、
千代さんご本人から嬉しいご報告をいただいたことがあり、
千代さんにとってその人は初めて恋に落ちたお方だと仰っていた。

何事にも真っ直ぐで、
真摯に取り組む姿を見て、
初めはこの人のようになりたいという尊敬の念を抱いていたという。
それから少しずつ話を交わしていく中で、
その人の持つ魅力に惹かれていったのだと、
以前私と千代さんだけで恋話をしたときに照れくさそうに微笑みながらそう言っていた。

『初恋は実らない』とはよく言うものだけれど、
私にとっても大切な人が、
こうして恋を成就させたことにはとても驚きはしたけれど、
それと同時にとても喜ばしくも思った。
婚姻を結び侍女としてのお仕事から離れられるのかと思っていたけれど、
どうやら千代さんが義経様に頼み込んで、
仕事はそのまま続行してもらえるように頼まれたとつい先程、
義経様のお部屋に訪ねたばかりの時に言われて、
本当にびっくりしたことを思い出す。

婚姻を結ぶと聞いたときに、
嬉しいと思うと同時にこれで今のようにお話することもなくなるのかなぁと悲しさを覚えていたから。
今までのように一緒にいれることはとても嬉しい。
/ 25ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp