第4章 「朝」/源頼朝
今日はどうやらあの日のことを思い出して反省したらしいな?
気付かないとでも思っていたのか。
褥から抜け出そうかこのままいようか悩んでいたことには気付いていた。
頼朝はわざと寝たフリをして、
由乃がどんな行動を起こすのか伺っていたのだ。
あの日の仕置きも意味を為したようで、
頼朝は一人密かに満足する。
あの日みたいな不安な気持ちに駆られるのはごめんだからな。
頼朝にとっての密かな楽しみとは、
愛する女の安らかな寝顔を見つめながら、
その艶やかな髪を梳いて、
由乃が目覚めるまで待つほんの少しの時間が、
由乃と恋仲になった当初からずっと朝が訪れる度に楽しみにしていたことだ。
今日もその楽しみを堪能できる嬉しさを噛み締めて、
安心して眠る由乃の額にそっと口付けを送った。
【the end】