第3章 「巡り巡った愛の先」/玉藻 《現パロ》
「俺は九百年近く待っていたのだがな。」
そう言いながらこちらを向く玉藻さんはどこか妖艶な笑みを浮かべている。
「(九、百年……?)」
人が生きるにしてはあまりにも長すぎる年月だ。
ますます言っている意味が分からなくなっていく
「俺は我慢が苦手なのでな、
無理矢理なのは申し訳ないが…思い出してもらうぞ?」
そう言った玉藻さんは私の左手を取り、
そこにそっと口付けたかと思えば、
チクリとした痛みが走った。
「っ……!?」
その直後に身体中を先程まで感じたお茶による穏やかな温かさとは違った熱が湧き上がってくるのが分かる。
「(あ、つい……何これ?)」
だけどどうしてかこの感覚に覚えがある。
怖いけれど私の思考とは関係なく、
身体は無意識にその温かさに身を委ねていく。
「そうだそのまま身を預けろ。
抗えば抗うほど辛いのはお前の方なのだから」
そっと掴んでいた左手をグイッと玉藻さんの方に引っ張られ、
そのままの勢いで玉藻さんの方へと身体が倒れてしまう。
「あ……」
「さあ、そのまま委ねてしまえ」
よしよしと頭を優しく撫でる感覚を感じながら瞼は徐々に重くなっていく。
──意識を失う直前に見たのは、
耳と尻尾を生やした玉藻さんの姿だった。