第3章 「巡り巡った愛の先」/玉藻 《現パロ》
そこはごく一般的にある家とそう変わりなく、
ただ一般の家をそのまま拡げたかのような内装をしていた。
ただ違う点は個室となっている部屋が全て畳であること。
部屋と部屋を繋ぐ廊下は木でできたものだったが、
それ以外の部屋と呼べるところは全て和室だったのだ。
「さあ、寛ぐといい」
「申し訳ないです……勝手に迷い込んでしまったのに」
「先程も言ったが構わないさ。
さて、自己紹介をしないとな?俺の名は玉藻という」
「(玉藻……?)」
どこか聞き覚えがあってだけど知らない名前。
胸の中がザワザワと何かに掻き乱されたような感覚を覚える。
「あ、えっと……私は由乃と申します」
「由乃……そうか」
驚いたような顔をしたあと、
どこか愛おしげにも見える優しげな笑みを玉藻さんは浮かべた。
その顔がまた何か引っかかってしまって。
「(ここに来てから何かおかしい……)」
この家へと辿り着いてから───
いや玉藻さんと出会ってから、
何か己がおかしいことに気付く。
だけどそれが何なのかそれが分からないのだ。
そんなモヤモヤとした感情を抱きながら、
私は玉藻さんに貸してもらうことになった部屋に持っていた荷物を置き、
それからこの屋敷の案内をしてくれるという玉藻さんに着いて行った。