第3章 「巡り巡った愛の先」/玉藻 《現パロ》
──それから時は経ち。
上司に言われた田舎町へと来た私は、
示された仕事をコツコツと果たしていった。
「予定よりも早めに終わったし……
ちょっとこの辺りを散策してみようかな」
そう思い至った私はすぐに行動に移した。
緑豊かで川の水も綺麗で、
小鳥がちゅんちゅんと鳴く声がこの空を響かせている。
都会とは違ったこの静けさが私は何よりも好きだった。
それからただ何となく、
直感に従って景色を堪能しながら歩いていると、
いつの間にか山奥に来てしまっていた。
山奥と言えども、
そこまで深い場所まで来てしまったのではなく、
建物が無くなった開けた場所に来てしまったのだが。
「ここは……」
とりあえず道を引き返そうと来た道へと身体を向けて、
歩き出すもののなぜか同じような景色が辺りに広がっていた。
「……どうしよう」
このままだと帰れない。
そう思い至ると焦りが私の頭の中を巣食う。
だけど立ち止まっていても仕方がないと自分に言い聞かせてまたその歩を進める。
──それからしばらくして、
山奥に民家らしきものが見えた。
その家は広く屋敷のようにも思える。
「こんな所に家……?」
田舎町といえども、
自分の仕事として訪れた場所にはコンビニやスーパーもあった。
しかし迷い込んだこの辺りにはそれらしきものは見当たらなかった。
だからこそこんな場所に家があるなんておかしいとさえ感じる。