第14章 山姥切国広 私の純情愛刀・:*+.
ー翌日。
今日は私が審神者に就任して五年目の記念日だ。
夜には刀剣の皆が宴を開いてくれるので、楽しみで浮き立つ気持ちを抑えながら、身支度を整えていた。
「いろはちょっといいか?」
「まんば君?どうぞ」
部屋の前からまんば君の声がして、胸が高鳴る。
「おはよう。支度中だったか?」
「おはよう!大丈夫だよ。どうかした?」
「いや。出陣の前にちょっと…いろはの顔が見たくてな。」
「っ!…まんば君…嬉しい」
普段はあまり自分から気持ちを伝えてくれることがないまんば君が、はにかみながらも言葉にしてくれた事が嬉しくて頬が緩む。
「っ!そんな顔…するなよ」
「だって…嬉しすぎて…」
まんば君は少しぎこちない手付きで私を引き寄せ、頬を優しく撫でながら顔をゆっくり近づける。
「いろは…」
私は目を閉じて、まんば君のかすかな吐息を感じ、唇が触れ合う瞬間…
「主ー!おっはよー!!」
「っ!!?」
いきなり開かれたドアにびっくりして、急いで離れる私たち。
「きっ…清光!ドアを開く前に声かけてよ!」
「うわっ!ごめーん!もしかして邪魔しちゃった?しちゃったよね?本当にごめんね!!」
「加州…俺が写しだからか?だからこんな仕打ちを…」
「え?山姥切怒ってる?ねぇ?すごい怒ってる?!」
「出陣だろ?行くぞ…。敵と間違ってお前を斬ったら…悪いな」
「えぇ?!ねぇ?本気で怖いんだけど!ごめんって!わざとじゃないんだって!」
「いろは…また夜にな。行ってくる」
「うん!行ってらっしゃい!」
私は満面の笑みで二振を見送る。
それにしても…今朝のまんば君はいつもとちょっと違ったな。
まんば君が積極的に恋人らしい事をしようとしてくれた事が嬉しくて、私は少し火照る頬を両手で包みこむ。
「ふふ…夜が楽しみだな」