第12章 白と黒の誘惑 歌仙兼定END˚✧₊⁎
「私はこちらの旦那様を選びます。」
私は歌仙さんを見つめて、そう答えた。
大倶利伽羅さんは、全てを受け入れたように優しく微笑み部屋を後にした。
「いろは!!」
襖が閉められ、二人きりになった瞬間、歌仙さんに痛いぐらい強く抱きしめられる。
「歌仙さん…」
「心配で心配で…生きた心地がしなかったよ!なんでこんな無茶をしたんだい!」
歌仙さんの温もりを感じて、声を聞いて、心から安堵した私の目からは涙が溢れ出す。
「歌仙…さん。ごめんなさい…本当にごめんなさい。…私っ…怖かったぁ…」
「怖い思いをさせたね。無事で本当に良かった…。怪我はないかい?」
歌仙さんは次から次に溢れる涙を拭いながら、優しく頬を両手で包む。
「はい…大丈夫です。」
「こんなに心配させて…いろはが無事だってちゃんと確認させてもらうよ?」
「っ…!」
歌仙さんは私の胸の鼓動を確かめるように、その上の肌に口付けをおとす。
「…いろは?愛刀として僕を選んでくれたんだよね?」
「はい。私も歌仙さんが…好きです。攫われた時、頭に浮かんだのは歌仙さんの事ばかりでした。」
「恐悦至極…。でも言葉だけじゃ足りないな。」
そのまま私を褥に押し倒し、首筋を舌でつーっと舐める。
「っ!歌仙さん…!本丸に帰らないとっ…」
「ここから逃げるのは明朝…遊郭が寝静まるころにしよう。…それまでたっぷり時間があるからね?」
「っ!」
歌仙さんはうっとりするほどの色気を孕んだ顔で微笑み、私の胸元に顔を埋めて強く吸い付き自分の印を残していく。
先ほどまでは気に留めていなかったが、耳を凝らすと隣の部屋から淫声が漏れ聞こえて、私の身体は一気に紅潮する。
ここは遊郭…
旦那さまに甘い夜を捧げる場所。
非現実的なこの場所にいる自分と歌仙さん。
羞恥心で目眩がしそうになる。
思わず逃げ腰になる私を歌仙さんがぐっと捕まえる。
「逃さないよ?ずっといろはが欲しくてたまらなかったんだ」
「歌仙さん…」
「大倶利伽羅と随分と仲良くしてたみたいだけど…」
「えっ?書斎でのこと…見てたんですか?」
「書斎?僕が見かけたのは庭だったんだけど…何があったんだい?」
「っ!えっ…と…なんでもないです!」
…やってしまった!
まさか自分から墓穴を掘るなんて!
私は急いで歌仙さんから目を背ける。