第11章 歌仙兼定vs大倶利伽羅 白と黒の誘惑・:*+.
「まさかこんなことになるなんて。選りにも選って…君とね」
「それはこっちの台詞だ。」
「はぁ…おそらくいろはならこちらに迎えに来ようとしているはずだ。それまで僕たちは待っているとしよう」
「…あぁ。」
江戸に取り残された歌仙と大倶利伽羅は、いろはが現れそうな場所をいくつか回っていた。
「可哀想にな…あの娘。きっと遊郭に売られちまう…」
「高価な牡丹柄の着物に、風変わりな胡桃色の髪だったな。あれは高値がつくだろうよ…」
その時、ふと正面から歩いてきた町人の話が耳に留まり、胸中がざわつく。
歌仙は自分が見立てた牡丹の着物を今朝いろはが着ていたことを思い出し、大倶利伽羅は柔らかないろはの栗色の髪が脳裏に過ぎる…。
「っ!待て!!」
「その娘は今どこにいる?!」
大倶利伽羅がぐっと男の肩を掴み、歌仙が焦燥感に駆られながら顔を覗きこむ。
二振りは男たちから詳しく話を聞き、神社へと急いだ。
「牡丹の着物に、胡桃色の髪!いろはに間違いない!!」
「…くそっ!急ぐぞ!!」
いろは!どうか間に合ってくれ!!
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目が覚めると、私は見たことのない真っ赤な部屋に横たわっていた。
「あぁ…目が覚めたかい?」
「っ…!ここは⁈」
「ここは江戸一番の遊郭"大和屋"さ。あんたは売られてきたんだよ。」
「っ!遊郭⁈…私は攫われてきたんです!お願いです!解放してください!!」
「可哀想だけど…こっちも商売だからねぇ。高値で買ったあんたを易々と逃すわけにはいかないんだ。
まぁ…あんたが気前のいい客を取ってくれれば、考えないこともないよ?」
さぁっと血の気が引いていく…
どうしよう⁈どうやって逃げる⁈
落ちつけ自分…。
私は震える手をぎゅっと握り、混乱する頭を必死に落ちつける。
「内儀さま」
その時襖が開けられ、禿が内儀に耳打ちをした。
「へぇ。あんた…すでに客が付いていたみたいだね?」
内儀が私を見据えて、卑しい笑顔になる。
「客がお呼びだよ。目一杯もてなしな!」
客⁈誰のこと⁈
私…知らない人に…春を…っ!嫌だ!!
※内儀…遊郭のオーナーの奥さん。
※禿…身の回りの世話をする幼女。