第11章 歌仙兼定vs大倶利伽羅 白と黒の誘惑・:*+.
ーその日の夜。
いろはは黙々と仕事をこなし、夕餉を食べに食堂へと向かった。
台所に立つ僕はいろはの姿を今か今かと待ち焦がれる。
「歌仙さーん!今日のご飯は何ですか?」
仔犬が尻尾をぶんぶん振るような勢いで、僕のところに駆け寄るいろはがたまらなく可愛くて、思わず笑みが溢れる。
「今日の仕事は全部終わったのかい?」
「はいっ!歌仙さんに褒めてもらうために、しっかり終わらせました!…お腹ぺこぺこです。」
「よしよし。いろははいい子だね。」
無邪気に笑う彼女の頭を優しく撫でて、ご飯を手渡す。
「よく噛んでゆっくり食べるんだよ?」
「いただきますっ!」
僕たちはいつもこうだ。
初期刀の僕は、いろはがどこに出ても恥ずかしくない立派な審神者になってほしいという思いが強い。
その気持ちのせいでいろはに厳しくしてしまうこともあるけれど、いろはは素直に僕を受け入れて日々努力をしてくれる。
僕はそんないろはがたまらなく誇らしくて愛おしい。
だから…他の刀剣が僕たちの邪魔をすることは絶対に許せない。
僕は食事が終わったいろはの隣に腰を下ろす。
「これは頑張ったご褒美だよ。」
「わぁ!カップケーキですか?クリームも載っていて可愛いですね!でも歌仙さんは和菓子しか作らないのに…」
「いろはが食べたいと言っていたからね。僕はなんだかんだ君には甘いんだ…。」
「ふふ。知ってます。歌仙さんは厳しくした後はすごく甘やかしてくれますよね。」
いろははカップケーキをぱくっと食べて、満面の笑みを浮かべる。
「んーっ!すごく美味しいです!幸せだなぁ…。」
「まったく…本当に手のかかる子だね?」
僕はくすくすと笑いながら、いろはの唇についたクリームを親指で拭き取り、自分の口に持っていく。