第11章 歌仙兼定vs大倶利伽羅 白と黒の誘惑・:*+.
「大倶利伽羅さん?えっと…重くないですか?」
「大丈夫だ。…軽すぎる。」
俺はいろはを抱えながら審神者部屋へと向かう。
「あのっ…私もう歩けます!っ…大倶利伽羅さん…みんな見てます…」
「そうか。」
廊下ですれ違う刀剣達が何事かと俺たちを見つめ、いろはは赤面し顔を両手で隠す。
だが下ろすつもりはない。
この柔らかいいろはのぬくもりを少しでも長く感じていたい。
「ゆっくり休め。」
俺は審神者部屋に着くと、いろはをベッドに下ろし立ち去る。
「あっ…あの!大倶利伽羅さん!…ありがとうございました。」
ぎゅっと俺の腕を握りしめ、照れながら笑ういろはに「あぁ」とだけ告げて部屋を出る。
自室に戻ると、部屋には太鼓鐘貞宗が座っていた。
「伽羅!どこに行ってたんだ?」
「貞宗…来てたのか。」
「なんか良い事でもあったのか?」
「何もない。」
「俺には分かるぜ!伽羅が嬉しそうって事は…主と何かあったか?」
「…」
俺は黙って布団に横になった。
腕にはまだいろはのぬくもりが微かに残る。
照れ笑いをするいろはの顔を思い浮かべながら、ふっと柔らかく笑った。