第11章 歌仙兼定vs大倶利伽羅 白と黒の誘惑・:*+.
「君って子はまったく…。だいたいね…昨日も夜更かししたから、朝起きられなかったんだろう?どうしてもっと…」
居間に響く歌仙の声。
正座するいろはを心配そうに見つめる燭台切。
「どうした?」
「加羅ちゃん!主が歌仙くんにお説教されていてね…」
大倶利伽羅は燭台切の目線の先にいるいろはを見る。
「っ…すいません…」
いろはは頭を垂れてしゅんと俯いている。
「まぁまぁ…歌仙くん。主も反省しているようだし、そろそろ解放してあげても良いんじゃない?」
捨てられた仔犬がご主人さまを見つけたかのような顔で燭台切を見つめるいろは。
「燭台切…君はそうやっていつもいろはを甘やかす。まぁ…反省しているようだし、今回はこのぐらいにしておこうか。」
「はいっ!」
僕はぱぁっと明るい顔になったいろはの顎をぐいっと持ち上げ見つめる。
「君ねぇ…本当に反省しているのかい?」
「しっ…しています!本当にっ!すごく!」
しどろもどろになりながら、こくこく頷くいろはに「まったく…」と頬笑みながら踵を返す。
「ひゃっ!」
「…大丈夫か?」
急に聞こえた声に振り返ると、大倶利伽羅に支えられているいろはの姿が目に入る。
「ずっと正座をしていたので…脚が痺れて…ははは…すいません。」
苦笑しながら大倶利伽羅を見つめるいろは。
「そのままでいい。」
「え?わっ!大倶利伽羅さん?」
大倶利伽羅はふわりといろはを抱きかかえ、歩きだす。
「大倶利伽羅!僕が連れて行く」
僕はとっさに大倶利伽羅の腕をぐっと掴んだ。
「いい。」
素っ気ない返事を返し、居間を出る大倶利伽羅といろはを見つめぎゅっと拳を強く握る。
「僕以外の刀剣が…いろはに触れるなんて嫌だ…」
嫉妬で歪む顔を隠しながら、誰もいなくなった居間でぽつりと呟いた。