第9章 燭台切光忠 甘いお仕置き・:*+.
ー翌日。
結局いろいろ考えすぎて、あまり眠れないまま朝を迎えてしまった。
「まずは…とりあえずダイエットしよう!」
私は鏡の中の自分を見つめて決意をする。
少し痩せて自分に自信を持てたら、きっとみっちゃんに釣り合う彼女になれるよね?
そう自分自身に言い聞かせながら、朝餉を食べに食堂へ向かう。
「いろはちゃんおはよう!もう体調は良くなったかな?」
「みっちゃんおはよう。もう大丈夫だよ!心配かけてごめんね…」
台所にいるみっちゃんに心配をかけないように、出来るだけいつも通りに振る舞う。
「あるじさーん!こっちで一緒に食べよう?」
「大将〜!ここ!俺のとなり!」
私はみっちゃんに「行ってくるね?」と伝えて、粟田口の席に向かう。
昨日あまりご飯を食べていない私の為に、みっちゃんが栄養満点のおかずを作ってくれた事がすごく伝わってチクリと胸が痛くなる。
うぅー。朝餉も全部私の大好物ばかり…でも…我慢っ!
私は粟田口の食べ盛りの短刀達におかずを分けてあげた。
全てはみっちゃんに相応しい女性になるため!
私は自分を鼓舞して食堂を後にした。
しかしその姿を見ていた燭台切は、昨日から自分への態度が違ういろはに違和感を覚え、後を追いかけた。
「仕事の前に何か運動したいなぁ。」
そう呟きながら廊下を歩いていると、大きな籠を背負った豊前江さんを見つけて駆け寄る。
「豊前江さん!裏山に行くの?」
「栗拾いにな。ちっと行ってくる!」
「私も一緒に行っていい?」
「お?暇なら一緒に走っか?」
「走る!…うーんと。やっぱり一緒に歩く!」
「はははっ。しょうがねぇな。後ろ、乗ってけよ!」
豊前江さんは私の肩を抱きよせ楽しそうに笑う。
豊前江さんと運動したらダイエットになる!
私はそんな暢気な事を考えながら裏山へと向かった。
その時、二人の楽しそうな姿を見ていた燭台切は呆然と立ちすくむ。
ふいに心の中に嫉妬と焦燥感が芽生える。
自分と距離を取ろうとする彼女。
自分の作ったご飯を食べてくれなくなった彼女。
他の刀剣とは満面の笑顔で話す彼女。
「飽きられてしまったかな…」
誰にも聞こえない小さな声でそう呟いた。
「燭台切?そんなところに突っ立って、どうしたんだい?」
「歌仙くん…少しお願いがあるんだ。」