第8章 宗三左文字 籠の中の歪んだ愛・:*+.
※この作品にはヤンデレな表現が多く出てきますので、苦手な方はご注意ください。
「貴方も天下が欲しいのですか?」
「うーん。私は天下より皆さんと過ごすこの日常が大切ですね。」
そう言って柔らかく笑う彼女は眩しい。
愛しくて愛しくて…僕の籠に閉じこめておきたい。
「宗三さんはもう籠の中の鳥じゃないですよ。これから私の刀剣として、たくさん戦ってもらいますね?
…あと一緒に美味しい物もたくさん食べましょう!」
彼女は顕現したての僕にそう言って花が咲いたように笑った。
その言葉通り、彼女は数えきれないほどの出陣を僕に任せてくれた。
初めて誰かに本当の意味で必要とされた。
使われることもなく、ただ在ることだけを求められた過去とは違う。
彼女の為に強くなりたい。
彼女を喜ばせたい。
そんな想いが日に日に強くなった。
僕の主は彼女だけ。
でも彼女の刀剣は僕だけじゃない。
すべての刀剣を同じように愛す彼女。
…僕だけを求めて欲しい。
「宗三さん?」
僕の顔を覗きこむ愛らしい彼女。
「何でもありませんよ。少し考え事をしていました。」
「仕事のさせ過ぎですね。すいません…。少し休憩しましょう!」
僕たちは休憩の為に居間に向かう。
「燭台切さんが私の好きなプリンを作ってくれたんです!早く食べたいなぁ。」
「燭台切が…ね。」
彼女が他の刀剣の話をすると心に黒い靄がかかる。
居間に着くと燭台切が彼女の隣に座る。
彼女に甘い言葉をかけ、笑顔を引き出す燭台切に苛々する。
左右色の違う瞳が危うげに揺れる。
僕だけのいろはになれば良いのに…。
休憩後、執務室に戻り事務作業を続ける。
「っ…痛っ!」
「どうしました?…紙で指を切りましたか」
「はい…でも全然平気で…っ!宗三さん⁈」
僕は彼女の指を口に含み、舌でねっとり傷口を舐める。
「っ!あっ…あの…」
見る見るうちに彼女の顔は赤くなり、逃げ腰になる。
「消毒ですよ?」
僕は逃げられないよう彼女の腰に腕を回し、再度指を口に含む。
「やっ…宗三さ…」
ゆっくりと指を解放すると、彼女は蕩けた顔で僕を見つめる。
「あっ…っ!…仕事に戻りますねっ」
急いで僕から目を逸らす彼女。
彼女が僕をもっと欲しがれば良いのに。