第7章 御手杵 ピュアな彼の秘めた欲望・:*+.
ドンっ!
「きゃっ。すっ…すいません。」
その時、誰かにぶつかってしまった。
「きみ…泣いてるのか?何があった⁈」
「鶴丸さっ…大丈夫です。何もありません。」
必死に笑顔を作り去っていこうとするいろはの手を掴み、ぎゅっと腕の中に閉じ込めた。
「なぁ。きみ…俺にしないか?」
「え?」
「御手杵だときみを理解できないだろ?俺だったら、きみを毎日笑顔にできる。」
鶴丸さんは真剣な顔で私を見つめる。
確かに鶴丸さんだったら、きっと私の気持ちを分かってくれるだろう…。
でも頭に浮かんでくるのは、どうしようもなく不器用で、純粋で、無邪気で、天然で…
可愛くて大好きな御手杵さんのことだった。
「鶴丸さん…私は…やっぱり御手杵さんが好きです。どうしようもないぐらいに好きで…だから…」
「あぁ…分かった。今はこのままでいい。…今はな。」
鶴丸は切なげな顔を見られないよう、もう一度優しくいろはを抱きしめた。
その頃。部屋を飛び出したいろはを追いかけた御手杵は、鶴丸に抱きしめられるいろはを見て、拳を痛いぐらいに握りしめた…。
その後、私は御手杵さんの言葉を思い出し、縁側で1人夜空を見つめていた。
「主…御手杵と何かあったのか?」
「骨喰さん…実はちょっと喧嘩しちゃって…」
私は困ったように笑う。
「そうか…。」
骨喰さんはそう言いながら私の隣に腰をおろす。
「私ばっかり御手杵さんの事が好きで…ちょっと疲れてしまったんです。」
「…そうなのか?俺はてっきり逆だと思っていた。御手杵の頭の中はいつも主でいっぱいだから。」
「え?」
「昨日も道場に行く途中、鶴丸と二人きりだと主が心配だからと部屋に戻った。
今日も主が鶴丸といるのが、辛そうだった。…御手杵のあんな顔を見るのは初めてだ」
「そんな…私の前では普段通りで…。」
「御手杵は不器用で分かりづらいけど、ちゃんと主のことを想ってる。」
そうほほえむ骨喰さん。
「骨喰さんっ…私っ!行ってきます!」
私はいてもたってもいられず、御手杵さんの部屋に向かった。