第5章 小狐丸 野性と理性の狭間・:*+.
◇◆最初に◆◇
・このお話の小狐丸には尻尾がある設定です。
私の愛刀は小狐丸さん。
身体は大きいのに、中身は小狐のように無邪気で、優しくてかわいくて…私を寵愛してくれる野性的な人。
「小狐丸どうしたの?」
「加州殿。すぐにぬしさまを迎えに行かねばなりません。」
「え?なんで傘?」
小狐丸は傘を持って万屋に急いだ。
その頃、万屋には雨宿りしている主の姿があった。
「さっきまであんなに快晴だったのになぁ」
止まない雨にため息をついたその時、傘をさしてこちらに向かってくる小狐丸さんの姿が目に入った。
「えっ?どうして小狐丸さんがここに?」
「雨の匂いがしましてな…ぬしさまを迎えにあがりました。」
「わーありがとうございます。雨だってよく分りましたね?」
「ふふ。野生故。」
小狐丸さんは野生の勘がとてもよく働くので、お陰で私もたくさん助けてもらっている。
でもちょっと困ることもある。
例えば鼻の効きすぎる彼が、私の月のものに気付いてしまう事とか…。
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ー数日前。
「ぬしさま、月のものがきたのでしょう?お腹は痛くないですか?
あっ!こんなに冷たいものを飲んではいけません!この小狐丸が一晩中あたためて差し上げます」
周りの刀剣たちがくすくす笑っているのが分かる。
「小狐丸さん…恥ずかしいです…」
私は真っ赤になった顔を咄嗟に手で隠す。
「ぬしさま、月のものは決して恥ずかしいことではありませぬよ?この小狐丸との赤子を…んっ!」
周りの視線にいたたまれなくなって私は小狐丸さんの口に蓋をする。
「小狐丸さん…部屋に戻りましょう?」
穴があったら入りたい!!
小狐丸さんの腕をぐいぐい引っ張って、部屋に送り届ける。
「では、私は仕事に戻りますので…。っ!」
小狐丸さんは立ち去ろうとした私の腕を掴み、ぎゅっと胸に閉じ込めた。
「ぬしさま…?ご機嫌を損ねてしまいましたか?」
「…怒ってないですよ。ただ恥ずかしかっただけです。」
「ふふ。良かったです。恥じらわれるぬしさまも本当に愛らしい」
小狐丸さんは尻尾をぶんぶん振って喜ぶ。
こんな姿をみたら、かわいくて許さない訳にはいかない…。
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