第4章 にっかり青江 ずるい彼は満月に野獣と化す・:*+.
扉が開いて彼の姿をとらえた瞬間、脳裏に焼き付く昨日の出来事が蘇り一瞬固まる。
「おや?どうしたんだい?幽霊でも見たような顔だね。もしかして昨日出たのかい?」
「…っ!で…てないです。大丈夫です。」
私は書類に目線を落として、彼に仕事の依頼をする。
「ふふ。分かったよ」と頷きながら仕事を進める彼。
昨日の出来事を全く気にも留めていない様子の彼を見て胸がチクリと痛んだ。
夜になり、やっと仕事が片付き彼にお礼を言う。
今日は仕事が多くて逆に助かった。
彼には外務を多く頼んだから、顔を合わせることも少なかったし。
「さて。じゃあ僕は部屋に戻るよ?きみが夜這いにきてくれたら嬉しいな?なんてね。」
「…っ!いつもそうやって…私をからかってばかりですね。本当にずるい…」
だめだ…いつも通りの彼の冗談なのに受け流せない…
俯いて泣きそうになるのを堪える私の顎をすくい真正面から見つめてくる彼。
「そんな顔、他の男に見せてはいけないよ?」
な…に…?なんでそんな事言うの?
私の気持ち知ってるくせに…
一気に私の抑えきれない感情が爆発する。
立ち上がり部屋を出ようとする彼の服を震える手で掴み、背伸びをして口付けた。
「おやおや。そんなに震えて…」
こんな状況でも彼が余裕たっぷりなのが悔しくて、私はもう一度口付けをしようと背伸びをする。
どんっ!
「んんっ…⁈にっか…んっ…」
次の瞬間ぐっと壁際に押さえつけられて、気がつくと彼に強引に唇を奪われていた。
角度を変えて何度も何度も攻められて、息をするのも許してくれない。
「口付けはこうやってするものだよ?」
彼は色気を含んだ声で笑い、私の口内を激しく犯していく。
「あっっ…んっ…やぁ…」
私は立っていられないほどの刺激を与えられ、身体は熱く疼いてもう何も考えられなくなる。
「ねぇ?いろは」
「にっか…りさん…」
「いろはは僕が好きなの?」
「…っ!私は…」
そこまで言いかけた私の言葉さえも彼の唇で塞がれる。
「んっ…ずる…いっ…」
この想いを伝えさせてもくれない意地悪な大好きな彼。
さっきよりも口付けは深くなっていき、私は息を乱し酸素を求める。
「こんなに熱っぽくなって…。僕に夜這いされたいのかい?」
本当にずるい。彼はいつだって最終的な決定権は私に与える。