第20章 明石国行 眼鏡の奥の熱い春情・:*+.
「あぁっ!明石さん…お風呂に入りましょう!薬研さんのお墨付きの秘湯ですし…」
これ以上こうしてたら、食べられちゃうっ!!
危機を感じた私は、ばっと顔を逸らして、咄嗟に別の話題を振る。
「積極的やなぁ?一緒に入りたいん?」
「えぇっ!?ちっ、違いますよっ…!」
「くくっ…ほんま見てて飽きひんわ。自分は離れたところで用心棒しときますから。ほな、行きましょか。」
そう言って、起き上がった明石さんに差し出された手をぎゅっと握って、温泉までの小道を進んでいく。
ふふ。明石さん…歩幅合わせてくれてる。
こういうさり気ない優しさはずっと変わらないなぁ。
私の右手を握る明石さんの大きな左手。
固くて鍛えられた剣士の男らしい手にドキドキしてしまう。
外はもう真っ暗で、空には無数の星が輝いている。
この時代は物騒で、温泉での強姦や人攫いなどの事件も頻繁に起こるらしい。
だからこその用心棒なんだけど…明石さん、本当は部屋でごろごろしていたいんじゃないかな?
「彼女はん守らなあかんのに、やる気ないとか言ってられまへんからなぁ。」
「えっ!?明石さん…心が読めるんですか?」
「ふっ…何考えてるんか、全部顔に書いてるからなぁ。まぁ、心配せんと自分に守られといてください。」
わわっ…かっこいい…!
こんなの好きにならない方が無理です。
明石さんの事どんどん好きになってしまう…。
やる気を出した明石さんは危険だっ!
「はぁぁ…気持ちいい…。」
明石さんに入口で見送られて、温泉のお湯にちゃぽんと浸かると乳白色のお湯がすっぽりと身体を包み、全身を温めてくれる。
数カ所に設置された灯籠で辺りが柔らかく照らされ、風でふわっと舞い上がった梔子の花びらが水面に浮かぶ。
「あっ…」
お湯で顏を優しく洗うと、唇の傷の瘡蓋がぽろっと剥がれ落ちた。
薬研先生!秘湯の効果淒いですっ!
傷が治ったってことは、明石さんに貰われちゃう…のかな?
うわぁぁ!なんか恥ずかしいような嬉しいような…。
でも私たち恋仲になったんだよね…
だったら…自然な事?だし、私も…明石さんとならしたい…
「えっ…!?きゃぁぁ?!!」
その刹那、何かが背後から勢いよく私の肩に飛び乗り、驚きのあまり絶叫する。
「主はん!?どないしたんや!?」
血相を変えて、駆け込んできた明石さんはその正体を見て、気が抜けたようにしゃがみ込む。