第20章 明石国行 眼鏡の奥の熱い春情・:*+.
「思った通りの抱き心地や。はぁ…やっと捕まえた。もう離さへん。」
「もぅ…!明石さん、あんまり私を揶揄わないでください…。」
ふっ…騒がしく脈打つ心臓の音がこっちまで聞こえてくる。
あったかくて、柔らかくて、ちっちゃい主はん。
ふわっと漂う甘い香りに本能が擽られて、眠っている獣欲が刺激される。
「いろは」
「えっ?名前、呼んでくれたの初めてですね…嬉しいです。」
「好きやで。」
「っ…!明石さん…」
「不器用で、臆病で、どんくさくて、手ぇかかってしゃあない…そんないろはが可愛くてたまらへんねん。」
「うぅ…褒められてない…」
「ふっ…ほんなら、甘い自分と意地悪な自分、どっちがお好みですか?」
「明石さんなら…あのっ…どちらでも…その…」
「"その"なんなん?ちゃんと言うてぇや?」
耳まで真っ赤に染まったいろはの顎を掴んで、瞳を覗きこみながら、優しく囁く。
「あっ、明石さんの事…好きになりました…」
困ったように垂れた眉で瞳を潤ませながらも、真っ直ぐに自分を見つめるいろは。
「っ…!やられた…」
「えっ…?」
あかん…思ってた以上の破壊力や。
可愛すぎひん?今のでめっちゃやる気になったわ。
こんなん我慢できるわけないやん…
まだお天道さん出てるけど、えぇかな?
「いろは…そんな顔、自分以外の男に絶対見せたらあかんで?」
「えっ…と?分かりました。ふふ…私、今すごく幸せです。明石さんあったかくて…明石さんの…声…心地いぃ…」
いろははぎゅっと自分に抱きついて、甘えるように顔を首元に擦り付ける。
ほんま…そういうとこやで…?
誰か…今まで狼にならへんかった自分を褒めてくれまへん?
このおひぃさん…これで無自覚やから、めっちゃ怖い。
他の刀剣に奪われへんか心配でたまらへんわ。
「!?」
ふと耳を澄ますと、ちっちゃい身体から規則的な寝息が聞こえ始める。
えぇ…嘘やろ…!?
この状況で寝るいろは…。
ふっ…さすがやなぁ。
無防備に眠るいろはの顔を覗きこんで、頬をむにっと優しく抓る。
「なぁ、いろは?おにぃさんにいつまで"待て"させるつもりなん?」
可愛すぎるいろはに翻弄されっぱなしやな…。
いろはの瘡蓋になった唇の傷を優しく撫でる。
ふっ…夜は覚悟しといてや?