第20章 明石国行 眼鏡の奥の熱い春情・:*+.
間もなく、騒ぎを聞きつけやってきた補佐官に全てを打ち明け、審神者と本丸の処分は免れたが、人間に手を挙げた明石さんは最低三ヶ月の謹慎処分を言い渡されてしまった。
「はぁ…明石さん…。どうしよう…私のせいで…」
「ほら?主、ここ座って。明石は大丈夫だよ。補佐官も報告書の為の事実確認だけだって言ってたし。」
明石さんが審議会に諮られている間、落ち着かず廊下を歩き回る私を、清光が宥めるように椅子に座らせる。
「それにしても…明石があんなに怒ったの初めて見た。」
「うん…。私の為に怒ってくれたんだよね…」
「主を守る姿…正直、カッコよかった。いつもはやる気ないとか言って何事にも執着しないのにさ、主だけは"特別"なんだろうね?」
「特別?審神者だからかな?」
「はぁぁ…主って本当鈍感…。男が本気になる理由なんて一つしかないでしょ?」
「えっ?…まさか…」
意味深にウインクする清光から顔を逸らし、ぎゅっと握った自分の手を見つめる。
明石さんが…私のこと?
そんなこと…あるわけないよ。
その後、無事に審議会を終えた明石さんと本丸に戻れたのは、他の刀剣達がぐっすりと寝静まった夜更だった。
(ちなみに私を襲ったあの監査官はもちろん懲戒解雇になりました。女の敵は永久におさらばです︎︎!)
「明石さん…本当にすいませんでした。」
私を自室まで送り届けてくれた明石さんの左手をそっと握る。
赤く腫れ上がった痛々しい指の付け根を見ると胸が痛んで罪悪感が溢れる。
「主はんが無事やったら、こんなん痛くも痒くもないですわ。」
「でも…謹慎処分も私のせいです。審神者の私が刀剣の使命を奪ってしまうなんて…」
「謹慎なんて自分には褒美やなぁ。働かんで良い時間…最高ですわ。」
「明石さ…っ!」
明石さんは私の傷ついた唇に親指で優しく触れる。
「痛そうやな…傷残らんかったらえぇけど…。」
ひどく心配そうなその表情と、あまりに優しい指先にドキッと胸が音を立てる。
うぅ…!どうしよう…
清光が意味深な事言うから、変に意識しちゃうよっ…!
「わっ…私の傷はすぐ治ります。」
「ほな、治ったらその唇…自分がもろてえぇですか?」
「えっ…?」
カチャ…
艶っぽく微笑む端正な明石さんの顔が近づき、眼鏡が悪戯に鼻先に当たる。