第20章 明石国行 眼鏡の奥の熱い春情・:*+.
「や…やめてください…」
「拒否するなら…お前の大事な刀剣を全てへし折って破壊し、本丸を消す事だって出来る。良いのか?」
監査官は私の着物の襟から手を差し込む。
「うっ…」
涙で歪む視界。ぎゅっと血が滲むほど噛み締めた唇。
爪が食い込むまで握りしめた拳。呑み込んだ声。
悔しいっ…
本丸を、刀剣を…守らないと…
でもこんな…こんなこと…!
バンっ!!ドカッ!!
なに…?
何が起きてるの?
「ちょっとおいたが過ぎるんちゃいます?」
刹那、部屋に飛び込んできた明石が、いろはに身を寄せる監査官を投げ飛ばす。
「なぁ?うちの主はんに触れてえぇって誰が言いました?」
「明石!!落ち着けって!!」
止めに入った加州を振り切るように、明石は鬼気迫る表情で、床に倒れ込んだ監査官の胸ぐらを掴み、思いきり左腕を振るう。
明石さん…?
明石さんの雷のような怒号が頭に響く。
「明石!やめろっ!!」
「あ"ぁ!?主はんを守れへんのやったら自分は何のためにここにいるんや!?」
「俺もこいつを絶対許さないっ…!でもこれ以上やったら死んじゃうから!」
だめ…
止めないと…明石さんが…!!
「明石さんっ…!」
思考が追いつかない私はただ無意識に走り、左腕を振り上げた明石さんの腕にぎゅっとしがみついた。
「明石さん…!!ごめんなさいっ…」
振り返った明石さんは私を痛憤の瞳で見つめ、ぎゅっと強く抱きしめる。
「いろは!!あんた阿保やろ!?なんで拒否せぇへんねん!!なんで自分に助け求めへんねん!?何よりも大切なんはあんたなんやで!?」
「うぅ…っ…明石さん…ごめんっ…なさっ…」
怒る声は大きくて怖いはずなのに、私を抱きしめる腕はあまりにも優しくて、いつまでも泣き続ける私をずっと包んでくれた。